12.幹線の過電流遮断器の施設と定格電流の計算方法
建物の中に電気を引き込むには、まずは幹線といわれる太い電線を施工します。
幹線自体には過電流遮断器を設置する決まりになっており、幹線に接続されている電動機と電熱器によって過電流遮断器の定格電流を求める式は異なってきます。
試験に出題される確率はとても高いので、幹線の過電流遮断器の定格電流の計算方法をしっかり覚えてください。
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幹線の施設と過電流遮断器の役割
建物内で電気を使えるようにするには、まずは、電気の引込口から各分電盤へ向けて幹線といわれる太い電線を敷設していかなくてはいけません。
幹線を敷設する工事としては、次の3種類があります。
- ケーブル工事:ケーブルをケーブルラックなどを使ったりして敷設する工事
- 金属管等工事:金属製や合成樹脂製の各種管に収めて敷設する工事
- バスダクト工事:絶縁体で覆われていない板状の導体をダクトの中に通して敷設する工事
また、幹線を敷設する主な方法としては、次の2通りあります。
- 幹線を分岐させて施設する方法:1本の太い幹線を枝分かれさせて数本の細い幹線へ幹線分岐させて敷設する方法のことです。
- 各幹線ごとに施設する方法:それぞれの幹線を枝分かれさせずに各フロアなどの目的の場所へ向けて敷設する方法のことです。
どちらが一般的に使われているかというと、コスト的なことも含めて太い幹線から細い幹線に分岐していく幹線分岐の方法です。
建物内に敷設されている幹線や幹線から枝分かれした幹線分岐の回路には、保護協調という考えから過電流遮断器を取り付けて電路や電路に接続された負荷を保護しなければいけません。
過電流遮断器の役割は、電気を使いすぎたり短絡したなどで電路に過電流が流れた時に電路や機械器具を保護する為のものです。そして、幹線に取り付けられた遮断器、幹線から分岐した幹線に取り付けられた遮断器というように段階的に遮断器を取り付けて保護していきます。
もし、電線に流れる電流の値に制限を作らなくていくらでも電流が流れる状態にしてしまったら、電線が耐えられる大きさの電流値を超えてしまうと発熱現象により電線の絶縁被覆が燃えだしてしまい大変危険ですし、接続されている電気機器も故障してしまう可能性がでてきます。
そのようなことが起こらないように、過電流遮断器というものを幹線に接続して電線と電気機器に異常が発生しないように保護しています。
分岐する幹線の過電流遮断器の施設と省略
基本的に、太い幹線を幹線分岐させる時は、分岐させた細い幹線の電源側電路へ過電流遮断器を取り付けて、分岐させた幹線を過電流から保護しなければいけませんが、次に述べる条件を満たしていれば分岐させた幹線の電路に過電流遮断器を設置しなくてもよいとされています。
- 分岐する幹線の許容電流が、分岐する幹線に接続される幹線の電源側に接続される過電流遮断器の定格電流の55%以上である場合。
※分岐する幹線の長さに制限なし。 - 分岐する幹線の長さが8m以下で、分岐する幹線の許容電流が分岐する幹線に接続される幹線の電源側に接続される過電流遮断器の定格電流の35%以上である場合。
- 分岐する幹線の長さが3m以下で、分岐する幹線の負荷側に他の分岐する幹線を接続しない場合。
※分岐する幹線の許容電流に制限なし。
上の条件のどれか1つでも該当していたら過電流遮断器の取り付けが省略できることを覚えておきましょう。
なお、幹線分岐と分岐回路は違うものですので間違えないようにしましょう。
幹線の過電流遮断器の定格電流の計算方法
分岐した幹線について話をしてきましたが、幹線自体にも過電流遮断器を設置しなければいけません。
幹線に設置する過電流遮断器の定格電流は、幹線から分岐したすべての幹線の許容電流値以下であることと決められていますが、幹線に電動機等が接続される場合の定格電流値は次のいずれかの条件を使って計算します。
- 電動機等の定格電流の合計値を3倍した値と、他の電気使用機械器具の定格電流の合計値とを足し合わせた値以下であること。
- 上記で計算した許容電流値を2.5倍した値を超える場合は、その許容電流値以下であること。
幹線の過電流遮断器の定格電流の計算方法を言葉で説明した内容を読んでもよくわからないと思いますので式にまとめました。
初めに、IA、IB、IM、IHを次のように定義してください。
- IA = 幹線の許容電流
- IB = 幹線の過電流遮断器の定格電流
- IM = 電動機などの定格電流の合計
- IH = 電熱器など、電動機以外の負荷の定格電流の合計
上記のように定義をすると、下の「幹線の過電流遮断器の定格電流を求める表」のような関係になります。
条件 | 幹線の過電流遮断器の定格電流 | |
---|---|---|
電動機などがある場合 | IB≦3IM + IH | 但し 2.5IA<3IM + IHの時 IB≦2.5IA |
電動機などがない場合 | IB≦IA |
幹線の過電流遮断器の定格電流を計算する時は、この表の条件に当てはまる式を使って行ってください。
このページは、電気設備の技術基準の解釈の第148条(低圧幹線の施設)の幹線の過電流遮断器の施設の内容を第二種電気工事士の筆記試験の勉強が少しでもはかどるようにわかりやすくまとめたものです。
幹線についてさらに詳しく知りたい方は、電気設備の技術基準の解釈に記載されているので目を通してください。
幹線の過電流遮断器の練習問題を解いてみよう
次の幹線の過電流遮断器に関する問題を解いて力をつけてください。
問題1のような、電動機と電熱器が接続された幹線の過電流遮断器の定格電流の最大値の関係を問う問題はよく出題されますので試験までに必ず解けれるようにしておいてください。
問題1
下の図のような、定格電流20Aの電動機2台と定格電流10Aの電熱器1台を接続した屋内幹線に施設する過電流遮断器の定格電流の最大値はいくらか?ただし、幹線の許容電流は70Aとする。
考え方:上の幹線の過電流遮断器の定格電流を求める表の電動機などがある場合の式に当てはめて計算してみましょう。
答え:この問題では電動機がありますので、電動機などがある場合の幹線の過電流遮断器の定格電流を求める式を使います。計算に使う式は2つありますので両方計算して成り立つ方を使ってください。
- 1つ目の式
- IB≦3IM + IH = 3×20×2+10 = 130[A]
- 2つ目の式
- 2.5IA<3IM + IH → 2.5×70<130 → 175<130 → この条件式は成立しません。
よって、過電流遮断器の定格電流は130[A]が答えになります。