3.接地工事の種類と接地抵抗値の決定方法
第二種電気工事士の筆記試験には、工事施工法として、接地工事の問題が出題されます。
接地工事とは、電気の配線が安全に使えれるように地面と接続されたアース棒とアース線の工事のことです。
接地工事の種類は、A種、B種、C種、D種の4種類があります。
接地工事の問題は試験に出題される確率は高いので、特に、C種、D種の問題は解けれるようにしてください。
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接地工事(A種、B種、C種、D種)とは
電気工事を行う時は、電線を電源(受変電設備)から分電盤へ延ばし、そして分岐させて器具と接続したりしますが、工事後に安全に電気を使うためには電気設備技術基準などのいろいろな規則を守って工事を進めていかなければいけません。
その規則の中には、接地工事についても定められていますので必ず守って工事をしてください。
接地工事を行う目的は、電気機器や電気設備を損傷から守る為の他に、それらの機器や設備に触れた人間が感電しないように、また、出火して火災にならないようにする為です。
電気機器の損傷や人の感電などの事故を未然に防ぐには、定められている接地抵抗値となるように接地工事を行うことです。
接地工事が適切に行われておれば、万が一、電気機器が漏電(電気が漏れている状態のこと)していても、電気は人間よりも抵抗値が小さい電線(地面と接続された電線)を通って大地へ流れていくようになるので、人間の感電や機器の火災を免れることができます。
このように、安全に電気を使う為には接地工事が必要になり、接地工事は高圧を扱うのか低圧を扱うのかの目的に応じて、A種、B種、C種、D種の4種類に分類されています。
- A種、B種接地工事:高圧・特別高圧を扱う電気工事の時
- C種、D種接地工事:低圧を扱う電気工事の時(C種:300Vを超える、D種:300V以下)
一般家庭のような電圧が300V以下で電気機器を使う場合の接地工事はD種になりますが、その他の電圧を扱う建物の場合もありますので下の「接地工事の種類の表」の内容を覚えましょう。
接地工事の種類 | 接地抵抗値 | 接地線の太さ | 漏電遮断器取付時 |
---|---|---|---|
A種 | 10Ω以下 | 直径2.6mm以上 | なし |
B種 | 150/I Ω (I = 1線地絡電流のアンペア数) | 直径4mm以上 (高圧電路又は特別高圧電路と低圧電路を変圧器により結合する場合は、直径2.6mm以上) | 動作時間が1秒を超え2秒以内の場合は 300/I Ω以下 動作時間が1秒以内の場合は 600/I Ω以下 |
C種 | 10Ω以下 | 直径1.6mm以上 | 動作時間0.5秒以内の場合は、接地抵抗値は500Ω以下 |
D種 | 100Ω以下 |
このように、接地工事の種類によって、接地線の太さや接地抵抗値などの条件が違うので注意してください。
漏電遮断器の設置と省略の条件
漏電遮断器は、電路や電気機器で漏電した場合に漏えい電流を感知して電路を遮断する役割をします。
電気設備技術基準には、金属製外箱を有する使用電圧が60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路で地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を設けることとなっています。
- 地絡とは
- 電路や電気機器で漏電が発生して、その漏電した電路や電気機器に人や物が触れると地面へ向けて電流が流れること。
漏電遮断器には、次のような様々な種類があるので目的に応じて使うようにしてください。
- 高感度形漏電遮断器:定格感度電流が30mA以下で動作する漏電遮断器のことです
- 中感度形漏電遮断器:定格感度電流が30mAを超え1000mA以下で動作する漏電遮断器のことです
- 高速形漏電遮断器:漏電した時に0.1秒以内で動作する漏電遮断器のことです
- 時延形漏電遮断器:漏電した時に動作する時間が遅い漏電遮断器のことです
ですので、電気機器の電源側に漏電遮断器を設置すれば、人間が感電したり機器の火災や損傷を防ぐことができ安全に電気を取り扱うことができます。
また、ある条件を満たせば接地工事を省略できたり、漏電遮断器自体も省略することができます。
漏電遮断器は、次のいずれかの条件に該当すれば省略できます。
- 機械器具を乾燥した場所に施設する場合
- 水気がない場所で、機械器具の対地電圧が150V以下の場合
- 2重絶縁構造(電気用品安全法の適用を受ける)のもの
- 機械器具に施されたC種接地工事、又はD種接地工事の接地抵抗値が3Ω以下の場合
この他にも省略できる条件はあるので、電気設備技術基準の第36条の地絡遮断装置の施設を参照してください。
金属管、金属線ぴ、可とう電線管等の屋内配線工事の接地工事
屋内で配管する金属管等の電線管の接地工事には、電圧による3種類の区分があります。
屋内配線工事での使用電圧 | 接地工事の種類 |
---|---|
300V以下 | D種 |
300Vを超える | C種 |
300Vを超える(人の触れるおそれがない場合) | D種 |
電気機器の金属製の鉄台や外箱の接地工事の種類
電気機器の鉄台や金属製の外箱の接地工事は、電圧による3種類の区分があります。
電気機械器具の電圧 | 接地工事の種類 |
---|---|
300V以下 | D種 |
300Vを超える低圧 | C種 |
高圧又は特別高圧 | A種 |
但し、次のいずれかに該当する場合は接地工事は省略できます。
- 交流対地電圧が150V以下の機器を乾燥した場所に施設する場合
- 低圧用の機械器具を絶縁物(乾燥した木製の床など)の上で取り扱う場合
- 2重絶縁構造の機械器具(電気用品安全法の適用を受けたもの)を施設する場合
- 鉄台や外箱の周囲に絶縁台を設ける場合
- 水気がない場所に施設する低圧用の機械器具に電気を供給する電路に、漏電遮断器(電気用品安全法の適用を受けた定格感度電流が15mA以下、動作時間が0.1秒以下の電流動作型のもの)を施設する場合
この他にも省略できる条件はあるので、電気設備技術基準の第29条の機械器具の金属製外箱等の接地を参照してください。
接地工事の練習問題を解いてみよう
次の接地工事に関する問題を解いて力をつけてください。
問題1~4のような、C種とD種の接地抵抗に関する問題はよく出題されますので試験までに必ず解けれるようにしておいてください。
問題1
次の接地工事の内容は正しいか答えよ。
C種接地工事をしようと思い、直径1.6mmの電線を使い接地抵抗値を100Ωとしようと考えた。正しい考え方ですか?
答え:間違っています。
C種接地工事の接地抵抗値は、10Ω以下としなければいけません。
問題2
次の説明文は正しいか答えよ。
D種接地工事は漏電による感電防止のために行う。正しい考え方ですか?
答え:正しい
接地工事の主な目的は漏電による事故防止であるから。
問題3
次の条件の場合では、D種接地工事は省略できるかできないか答えよ?
- イ.水気がある場所の床の上に施設する3相200Vの誘導電動機の鉄台
- ロ.乾燥した木製の床の上で取り扱うように施設する単相100Vの電動機の鉄台
- ハ.乾燥した場所に施設する3相3線式200Vの電線を収める長さ8mの金属管
- ニ.乾燥した場所に施設する単相3線式100/200V(対地電圧100V)の電線を収める長さ10mの金属管
考え方:D種接地工事が省略できる条件は次の場合です。
- 金属管について
- 1.使用電圧が300V以下で交流対地電圧が150V以下で管の長さが8m以下で人が容易に触れる恐れがない場所
- 2.使用電圧が300V以下で交流対地電圧が150V以下で管の長さが8m以下で乾燥した場所
- 3.使用電圧が300V以下で交流対地電圧が150Vを超えて管の長さが4m以下で乾燥した場所
- 鉄台や外箱について
- 1.交流対地電圧が150V以下で乾燥した場所に施設する場合
- 2.低圧用の機械器具を絶縁物の上で取り扱う場合
- 3.鉄台や外箱の周囲に絶縁台を設ける場合
答え:
イ.水気がある場所では省略できません。
ロ.その条件で省略できます。
ハ.その条件では省略できません。金属管の長さが4m以下なら省略できます。
ニ.その条件では省略できません。金属管の長さが8m以下なら省略できます。
問題4
次の説明文は正しいか答えよ。
金属製の外箱がある使用電圧が100Vの機械器具を乾燥した場所に施設したので電路に漏電遮断器を設置しなかった。正しい考え方ですか?
答え:正しい
乾燥した場所では、漏電遮断器は省略できます。