7.金属ダクト工事の概要と接地工事・施工場所
金属ダクト工事とは、金属製のダクト(幅が5cmを超えて厚さが1.2mm以上の鉄板など)の中に電線を通して機械・器具へ電気を送る工事方法のことです。
金属ダクトの接地工事の種類、金属ダクト工事を行ってもよい場所は、電気設備の技術基準の解釈で決められています。
試験に出題される確率はあまり高くありませんが試験範囲に含まれていますし、実際に電気工事を行う時は必ず知っていなければならない知識なのでしっかり覚えてください。
このページの目次
金属ダクト工事について
一般的な電気工事の種類としては、ケーブル工事、金属管工事、合成樹脂管工事、金属可とう電線管工事があり、それらの工事方法は様々な場所に施工できるのでよく使われています。
その他でも施工できる場所に制限はありますが目的に応じて様々な低圧の屋内配線工事があり、金属ダクト工事も配線工事を行う時に用いる工事の1つとなります。
金属ダクト工事は、金属製のダクトに電線を収めて配線する工事です。
※金属ダクトとは、幅が5cmを超えて厚さが1.2mm以上の鉄板のものや同等以上の強さがある金属製のもののことです。
金属ダクト工事で使用してもよい低圧屋内配線の電線は、屋外用ビニル絶縁電線(OW)を除く絶縁電線とされています。
金属ダクト工事で気をつけるべきことをいくつかまとめましたので覚えてください。
- 金属ダクト内では、原則、電線に接続点を設けてはいけないことになっています。但し、電線を分岐する場合で接続点が容易に点検できる時は金属ダクト内で接続が許されます。
- 金属ダクトに収める電線の断面積の総和は、金属ダクトの内部断面積の20%以下とされていますが、電光サイン装置、出退表示灯などこれらに類する装置又は制御回路等の配線のみを収める場合は50%以下にできます。
- 金属ダクト相互は、堅ろうで電気的に完全に接続すること。
- 金属ダクトを造営材に取り付ける場合は、金属ダクトの支持点間の距離を3m以下とし堅ろうに取り付けること。
※取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所で垂直に取り付ける場合は6m以下。 - 金属ダクトの終端部は、閉そくすること。
金属ダクトの接地工事について
金属ダクトは材質が金属製なので次の表のように接地工事が原則必要になります。
工事の名称 | 使用電圧 | |
---|---|---|
300V以下 | 300V超 | |
金属ダクト工事 | D種接地工事 | C種接地工事 (条件付きでD種へ緩和) |
金属製のものは電気を流す材質なので漏電などにより電気が流れて人が感電したり火災事故が起きないようにする為に、接地工事を行い地中に埋めた接地極に電気を流す対策を施しましょう。
接地工事を行う時は、基本的には、低圧屋内配線の使用電圧が300V以下の時は金属ダクトにはD種接地工事を、300Vを超える時は金属ダクトにはC種接地工事を施すことになっていますが、接触防護措置を施す場合はD種接地工事でも行えます。
金属ダクト工事の施設場所について
金属ダクト工事を行ってもよい場所は、展開した場所と点検できる隠ぺい場所で、どちらも乾燥していることが施工できる条件となります。
※使用電圧が300V以下でも300Vを超えていても施工できます。
工事の名称 | 展開した場所 | 点検できる隠ぺい場所 | 点検できない隠ぺい場所 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
乾燥 | 湿気と水気 | 乾燥 | 湿気と水気 | 乾燥 | 湿気と水気 | |
金属ダクト工事 | ○ | × | ○ | × | × | × |
- 展開した場所:露出した天井や壁面などのこと。
- 点検できる隠ぺい場所:隠ぺいされているが点検口が設置されていて容易に点検できる場所のこと。天井裏や床下などのこと。
- 点検できない隠ぺい場所:点検口が設けられておらず容易に点検できない場所のこと。壁の内部や天井のふところなど。
※湿気が多く水気があるすべての場所、すべての点検できない隠ぺい場所には施工できません。
金属ダクト工事の施設場所(特殊な場所)について
金属ダクト工事では、次のようなすべての特殊な場所では施工できません。
工事の名称 | 爆燃性粉じんがある場所 | 可燃性粉じんがある場所 | その他の粉じんがある場所 | 可燃性のガス又は引火性物質がある場所 | 危険物を製造し又は貯蔵する場所 |
---|---|---|---|---|---|
金属ダクト工事 | × | × | × | × | × |
このように、金属ダクト工事は乾燥している展開した場所と乾燥している点検できる隠ぺい場所でしか施工することができないと覚えておきましょう。
このページは、電気設備の技術基準の解釈の第162条(金属ダクト工事)などの内容を第二種電気工事士の筆記試験の勉強が少しでもはかどるようにわかりやすくまとめたものです。
金属ダクト工事についてさらに詳しく知りたい方は、電気設備の技術基準の解釈に記載されているので目を通してください。
金属ダクト工事の練習問題を解いてみよう
次の金属ダクト工事に関する問題を解いて力をつけてください。
問題2のような、金属ダクト工事の施工ができる場所を問う問題は出題される傾向が高いので試験までに必ず解けれるようにしておいてください。
問題1
次のそれぞれの記述は、金属ダクト工事での正しい施工方法であるか答えよ。
- イ.金属ダクトの中に絶縁電線を収めて配線した
- ロ.金属ダクトの中では絶縁電線の接続点を設けなかった
- ハ.金属ダクトの支持点間を3m以下となるように造営材に取り付けた
- 二.金属ダクトの終端部は閉じずに工事を終わらせた
考え方:金属ダクト工事では、絶縁電線を金属ダクトの中へ収めなければいけません。
また、金属ダクト内では、原則、電線の接続点を設けないこと、金属ダクトの支持点間の距離は3m以下、金属ダクトの終端部分は閉じることとなっています。
答え:
イ.正しい
ロ.正しい
ハ.正しい
二.誤り
問題2
次のそれぞれの記述は、金属ダクト工事が行える場所として正しいか答えよ。
- イ.展開して乾燥した場所
- ロ.点検口があり乾燥していて隠ぺいされた場所
- ハ.点検口がない隠ぺい場所
- 二.爆燃性粉じんがある場所
考え方:金属ダクト工事は、展開した場所と点検口がある隠ぺいした場所で施工できますが、どちらも乾燥した場所という条件があります。
答え:
イ.正しい
ロ.正しい
ハ.誤り
二.誤り
問題3
電線の分岐の為の電線の接続点が認められない工事はどれか答えよ。
- イ.金属ダクト工事
- ロ.金属線ぴ工事
- ハ.フロアダクト工事
- 二.金属管工事
考え方:電線の分岐の為の電線の接続点が条件付きで認められる工事は、金属ダクト工事、金属線ぴ工事、フロアダクト工事、セルラダクト工事です。
答え: ニ