13.分岐回路に施設する過電流遮断器、コンセント、電線の太さの条件
建物の中に引き込まれた電気の配線は、幹線と分岐回路で構成されています。
分岐回路は過電流遮断器を取り付けなければならない決まりになっており、また、分岐回路の種類によって接続が許されるコンセントのアンペア数と電線の太さが異なってきます。
試験には毎回必ず出題されます。試験に出題される確率はとても高いので、幹線から分岐する分岐回路の設計方法をしっかり覚えてください。
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幹線から枝分かれした分岐回路を正しく設計するには
電気の配線は上の図のように、青色の線で示した幹線と幹線から小分けされた黒色の線で示した分岐回路の2種類の線で構成されています。
- 幹線
- 電柱から電線を引き込んだ後の引込口から分岐ブレーカー(開閉器や過電流遮断器)までの電路のことで、主要の箇所を結んでいる太い電線のことです。
- 分岐回路
- 分岐ブレーカー(開閉器や過電流遮断器)から負荷までの電路のことで、幹線から枝分かれして中規模や小規模の各室内などの箇所へ振り分けられた細い電線のことです。
幹線から枝分かれした分岐回路には、分岐回路の種類(過電流遮断器の定格電流)に応じて接続できるコンセントの定格電流と配線できる電線の太さがあらかじめ決まっています。
基準を満たしていない分岐回路では、その分岐回路内にあるコンセントから電気を使ったとき、電線から出火して火災が起こる原因などがあり大変危険ですので、必ず決められた基準を守って設計してください。
分岐回路を設計する時のポイントは、
- 分岐回路に施設される開閉器や過電流遮断器の定格電流値をいくらにするか?
- その分岐回路に使う電線の太さの最小値は?
- その分岐回路に接続が許されるコンセントの定格電流値は?
に気をつけることです。
この3つの事柄のどれか1つでも間違えてしまうと分岐回路を保護することができなくなるので気をつけましょう。
分岐回路の過電流遮断器の設置箇所
分岐回路へ過電流遮断器を取り付ける時は、次に示す「幹線と分岐回路の図」のような関係があります。
基本的には、分岐回路に施設する開閉器や過電流遮断器は、分岐点から電線の長さが3m以下の箇所に施設することが決められていますが、場合によってはこの限りではなく例外があります。
IB = 幹線の過電流遮断器の定格電流
IW = 分岐回路(分岐点から)の電線の許容電流
- 分岐点からの電線の長さが8m以下で、分岐点からの分岐回路の電線の許容電流が幹線の過電流遮断器の定格電流の35%以上の時は分岐点から3mを超える箇所にも施設できます。
※8m以下の箇所ならどこの位置にも施設できます。 - 分岐点からの分岐回路の電線の許容電流が幹線の過電流遮断器の定格電流の55%以上の時は分岐点から何メートル以内に施設するという制限は特に設けていません。
このように、ある条件を満たすと分岐点から3m以上の箇所でも過電流遮断器が施設できるようになることを覚えておきましょう。
分岐回路と幹線分岐は違うものですので間違えないようにしましょう。
分岐回路の種類とコンセントの定格電流・電線の太さについて
分岐回路の種類には、次に示す「分岐回路の種類の表」のような関係があります。
分岐回路の種類 | 接続が許されるコンセントの定格電流 | 電線の太さ (最小値) |
---|---|---|
15A | 15A以下 | 直径1.6mm |
B20A (配線用遮断器) | 20A以下 | |
20A | 20Aのもの | 直径2.0mm |
30A | 20A以上30A以下 | 直径2.6mm |
40A | 30A以上40A以下 | 断面積8mm2 |
50A | 40A以上50A以下 | 断面積14mm2 |
上の表での分岐回路の種類には、次のように分岐回路に入れる開閉器や過電流遮断器の定格電流が決められています。
- 15A:定格電流15A以下の過電流遮断器
- B20A:定格電流15A超20A以下の配線用遮断器
- 20A:定格電流15A超20A以下のヒューズ
- 30A:定格電流20A超30A以下の過電流遮断器
- 40A:定格電流30A超40A以下の過電流遮断器
- 50A:定格電流40A超50A以下の過電流遮断器
※分岐回路の20Aの種類には、B20Aと普通の20Aがあります。B20Aとは配線用遮断器で保護する回路、20Aとは配線用遮断器以外のもので保護する回路(ヒューズでの保護が該当)のことです。
過電流遮断器には、主に、ヒューズと配線用遮断器の2種類があります。配線用遮断器とは、過電流(過負荷電流や短絡電流など)から配線を保護する目的のブレーカーのことで、過電流遮断器とは、過電流から配線と機械器具を保護する目的のブレーカーを指し示す言葉です。実際、過電流遮断器という名前の製品はありません。
分岐回路に設置するこれらの過電流遮断器の定格電流によって分岐回路の種類が決まり、そして、接続が許されるコンセントの定格電流と電線の太さが決まります。
なお、コンセントの個数については特に定められていません。
分岐回路は筆記試験に毎回1問は出題されるので出題頻度が高いです。過電流遮断器の定格電流とその負荷側に接続できるコンセントの定格電流と電線の太さの関係をしっかり理解しましょう。
このページは、電気設備の技術基準の解釈の第149条(低圧分岐回路等の施設)の内容を第二種電気工事士の筆記試験の勉強が少しでもはかどるようにわかりやすくまとめたものです。
分岐回路についてさらに詳しく知りたい方は、電気設備の技術基準の解釈に記載されているので目を通してください。
分岐回路の練習問題を解いてみよう
次の分岐回路に関する問題を解いて力をつけてください。
問題2、問題3のような、分岐回路の種類とコンセントの定格電流と電線の太さの関係を問う問題はよく出題されますので試験までに必ず解けれるようにしておいてください。
問題1
定格電流80Aの過電流遮断器を施設した屋内幹線から断面積8mm2のVVFケーブル(許容電流42A)で分岐する場合、分岐点から過電流遮断器までの最大長さはいくらか?
考え方:幹線の過電流遮断器の定格電流に対する分岐回路の許容電流の比を求めましょう。
計算して求められた比は52.5%です。この値を上の幹線と分岐回路の図から調べると35%以上55%未満である場合があてはまりますので、8mが導きだせます。
答え:8m
問題2
次の図のような配線用遮断器が施設された低圧屋内配線の分岐回路の設計は正しいか答えよ。
考え方:この回路は、20Aの配線用遮断器がついた分岐回路で15Aのコンセントが3つ接続されています。
上の分岐回路の種類の表から調べますと、B20Aの分岐回路には定格電流20A以下のコンセントをつなげることができて、電線の太さの最小値は1.6mmとなっています。
したがって、条件を満たしており、この分岐回路に15Aのコンセントは接続することができます。
答え:設計は「正しい」となります。
問題3
次の図のような配線用遮断器が施設された低圧屋内配線の分岐回路の設計は正しいか答えよ。
考え方:この回路は、40Aの配線用遮断器がついた分岐回路で40Aのコンセントが2つ接続されています。
上の分岐回路の種類の表から調べますと、40Aの分岐回路には定格電流40Aのコンセントをつなげることができて、電線の断面積の最小値は8mm2となっています。
したがって、条件を満たしており、この分岐回路に40Aのコンセントを接続することはできます。
答え:設計は「正しい」となります。