7.交流回路の有効電力、無効電力、皮相電力の計算方法
第二種電気工事士の筆記試験には、電気理論として、交流回路の電力(有効電力、無効電力、皮相電力)の問題が出題されます。
有効電力とは、抵抗負荷で消費される電力のことです。
無効電力とは、コイルやコンデンサに貯まり消費されない電力のことです。
皮相電力とは、有効電力と無効電力をベクトル合成した電力のことです。
特に抵抗とコイルを接続した回路は試験に出題される確率は高いので、問題の解き方をしっかり覚えてください。
このページの目次
交流回路の電力って何ですか?
電気の交流回路の電力は、次の様に、有効電力、無効電力、皮相電力の3種類に分類されます。
交流の電気を扱う時はそれぞれの電力の配分がどのようになっているのか知ることはとても大事なことですので、公式を使って電力の計算をする際は各電力の意味の違いが理解できるようにしっかりと覚えておきましょう。
- 有効電力(ゆうこうでんりょく)
- 有効電力とは、抵抗負荷で実際に消費されるエネルギーのことです。
字のごとく有効に使われる電力になります。 - 無効電力(むこうでんりょく)
- 無効電力とは、コイルやコンデンサに蓄えられたりしたエネルギーのことで、実際には消費されない電力です。
無効電力の種類は、コンデンサによって発生する進み無効電力とコイルによって発生する遅れ無効電力があります。
字のごとく無効となる電力なので少なければ少ない程いいです。 - 皮相電力(ひそうでんりょく)
- 皮相電力とは、有効電力と無効電力をベクトル合成したエネルギーのことです。実際には消費されない無効電力分が含まれているので見かけ上の電力となります。
一般的に交流回路の場合では、単に電力という時は有効電力(消費電力)のことを指しています。
電力の違いがどういうものかわかったところで、次は有効電力、無効電力、皮相電力とcosθ、sinθの関係について詳しく見ていきましょう。
有効電力、無効電力、皮相電力の説明と公式
交流回路の各電力を計算する時は、三角関数のcosθやsinθを使って行います。
このcosθとsinθは各電力とどのように関係しているのか覚えてください。
- 有効電力とは
有効電力は、交流電圧と交流電流との関係にcosθ(コサインシータ)分の位相のずれがある時に使われます。
皮相電力にcosθを掛け合わせると有効に使われた電力を表すことができます。このcosθを力率といいます。
有効電力の単位は、W(ワット)です。
- 無効電力とは
無効電力は、交流電圧と交流電流との関係にsinθ(サインシータ)分の位相のずれがある時に使われます。
皮相電力にsinθを掛け合わせると有効に使われなかった電力を表すことができます。このsinθを無効率といいます。
無効電力の単位は、var(バール)です。その他に、Vを大文字にしたVarも実際には使われています。
- 皮相電力とは
皮相電力は、交流電圧と交流電流を掛け合わせたものです。
ですので、有効に使われた電力や無効になった電力を意識しなくていいので、主に機器全体の容量を表す時によく使われます。
皮相電力の単位は、VA(ボルトアンペア)です。
有効電力、無効電力、皮相電力の意味が理解できたところで、最後に、それぞれの電力の公式を覚えましょう。
記号の説明:V=電圧、I=電流、cosθとsinθは位相差(位相のずれ)のこと
有効電力は抵抗で消費される電力のことなので、VIcosθの他には、電流の2乗掛ける抵抗(I2R)でも計算できます。
力率と無効率について
有効電力と無効電力を計算する公式にはcosθとsinθという普段見慣れない記号ががでてきますが高校生の時に勉強した三角関数を思い出してください。
三角関数なんて勉強していないという方は、この際覚えてしまいましょう。
三角関数とは、簡単に言うと角度(θ)の大きさと線分の長さの関係を表したもののことです。
※角度のことをθ(シータ)といいます。
では、電力の計算で使うcosθとsinθは、どの線分との長さの関係を表しているのかというと次の様になります。
- cosθとは、交流回路においての皮相電力の線分に対する有効電力の線分との割合を表しています。
電力の世界では、cosθと力率は同じ意味です。 - sinθとは、交流回路においての皮相電力の線分に対する無効電力の線分との割合を表しています。
電力の世界では、sinθと無効率は同じ意味です。
※cosの2乗とsinの2乗とを足し合わせると1が成り立つ関係があります。
つまり、力率とは全体の電力(皮相電力)の中の有効電力がどのくらい占めているのかの割合のことです。
力率が悪いとムダな電力をより多く使わないといけなくなるので電化製品の効率が悪くなります。このような状況を避ける為に、実際の電化製品は力率を1に近付けるように改善(0が最小、1が最大)する努力をしています。力率がよくなると無効電力が少なくなるので省エネに貢献でき無駄な電力を減らして利用することができます。
なお、抵抗のみの交流回路であれば、電圧と電流の位相差はなく同相なので力率は1になりますが、現実には回路中に無効電力の要因であるモーターのコイル(誘導リアクタンスで遅れ無効電力が発生)とコンデンサ(容量リアクタンスで進み無効電力が発生)が使われているので力率を考慮しなければいけません。
電化製品を効率よく使うには、力率は1に近く、無効率は0に近い方が良いと覚えておきましょう。
交流回路の電力の練習問題を解いてみよう
次の交流回路の電力に関する問題を解いて力をつけてください。
問題2のような、抵抗とコイルが接続された回路の問題はよく出題されますので試験までに必ず解けれるようにしておいてください。
問題1
皮相電力が2kVAの交流電動機がcosθ=0.8で運転している時、有効電力、sinθ、無効電力はいくらになるか答えよ。
考え方:上記で説明した有効電力、sinθ、無効電力の公式を使って計算してみましょう。sinθを求める時は三角関数の式をsinθ=となるように変形してください。
答え:
問題2
次の回路に、交流100Vを加えた時の消費電力はいくらか?
考え方:回路の直列インピーダンス(抵抗とコイルとを合成した抵抗値)を求めた後に、有効電力を求める式に当てはめて計算してみましょう。
答え:
問題3
単相100Vの交流回路に、電圧100V、消費電力30W、力率60%の蛍光灯が4個接続されている場合では、回路に電流はいくら流れるか答えよ?
考え方:有効電力を求める公式を、電流を求める式I=となるように式を変形してから計算してみましょう。
力率60%とは、cosθでは0.6として計算します。
答え: